ゲーム業界の年次調査「State of the Game Industry」の2026年版は、2,300人以上の業界プロフェッショナルへの調査をもとにまとめられている。そこに映るのは、ひとつの単純な物語ではなく、二つの矛盾したグラフが同時に上向いている姿だ。
レイオフは「もう特別なことではない」
過去2年間にレイオフを経験したと答えた人は28%、米国に限れば33%に上る。回答者の半数が「現在または過去の雇用主が過去12ヶ月間にレイオフを実施した」と答え、AAAスタジオでは3分の2、インディースタジオでも3分の1がこれを経験している。ゲーム業界を目指す学生の74%が就職への不安を口にしており、その理由として名指しされているのが「AIによる雇用喪失」だ。
生成AIへの評価は、使うほど厳しくなる
同じ調査で、「生成AIが業界に悪影響を及ぼしている」と答えた人は52%。前年の30%から1年で20ポイント以上跳ね上がった数字だ。しかも、この否定的な見方はビジュアルアート担当者で64%、ゲームデザイナーで63%、プログラマーで59%と、実際に創作の現場に近い職種ほど強い。
一方で、生成AIを実際に使っている人の割合は36%で、これ自体は決して少なくない。興味深いのは職種による差だ。ゲームスタジオ内での利用率は30%にとどまるが、パブリッシャーやマーケティング企業では58%に達する。つまり「作る側」よりも「売る側・広める側」で生成AIの利用が先に進んでいる。現場のクリエイターが懸念を強めているまさにその横で、ビジネスサイドの活用は着実に広がっている——この温度差こそが、今のゲーム業界の生成AIをめぐる空気を最もよく表している数字かもしれない。
エンジンと労働組合、静かに進む地殻変動
調査ではもう一つ、興味深い動きが見える。開発エンジンではUnreal Engineの採用が42%まで拡大し、AA・AAAスタジオでは主流になりつつある一方、インディースタジオではUnityが依然優位(30%)を保つ。技術選定の分断は、そのままスタジオ規模による生存戦略の違いを映している。
そして労働組合化への支持は82%、反対はわずか5%。すでに10%が業界別組合に加入し、62%が今後の加入に意欲を示す。レイオフと生成AIへの不信、そして組織化への支持の高まりは、別々の現象ではなく、同じ不安から生まれた三つの症状として読むべきだろう。
VFX業界との対比
前回の記事で触れたGaussian Splatsのように、CG・VFX業界では「技術が創作の反復作業を肩代わりし、アーティストが判断業務に集中できる」という前向きな語られ方をされることが多い。だがゲーム業界の調査結果は、同じ技術トレンドでも受け止め方は一枚岩ではないことを示している。技術の進化速度と、雇用・評価制度の変化速度がずれたとき、そのしわ寄せは数字となって現れる。
